交通事件

免許停止、免許取消の聴聞手続

東京都公安委員会における聴聞手続について

重大な交通違反などを犯したことによって90日以上の免許停止や免許取消処分がなされる見込みの場合、聴聞の手続が行われ、同手続の日に免許停止又は免許取消処分がなされます。

この手続における弁護士としての関与は、基本的に、補佐人として当事者の方と聴聞手続に出席したり、事前に意見書を作成して公安委員会に提出をするという段取りになります。

現実問題として、弁護士の関与によって、聴聞手続の段階で処分が軽くなる事例というのはそれほど多くない印象ですが、やはりやれることはやっておきたい、であるとか、主張すべきは主張して欲しいとの要望もありますから、公安委員会の聴聞手続に出席する機会に恵まれることがあります。

この投稿では、2025年6月時点における、東京都公安委員会における大まかなタイムスケジュールや、聴聞手続における質問事項などについて、ご紹介をさせていただきたいと思います。

聴聞手続が実施されるまでの流れ

弁護士が関与する場合の聴聞手続実施までの大まかな流れは、

1 当事者に対して、意見の聴取通知書が届く

2 補佐人として就任した旨の書面を公安委員会に送付する
→ 聴聞手続の日取りが近過ぎて準備ができない場合には、実施日を変更していただけないか公安委員会に諮ることとなります。経験上、一度は変更をしてもらえることが多いのかな、という印象です。

3 聴聞手続の2、3日前までに補佐人意見書を提出する

4 聴聞手続当日、当事者と同席する。

という内容になると思います。

注意すべき点としては、東京公安委員会の場合、聴聞手続は、金曜日午前9時からの開催となる点ですので、開催日に関して融通が効きにくい点かと思います。

また、東京の場合、日程変更をする場合には、1か月以上先の日程を指定されることが多く、金曜日午前の日程がとりあえず入れられない、ということとなります。

聴聞手続の大まかなタイムスケジュール

東京公安委員会における聴聞手続のタイムスケジュールは、概ね以下のとおりです。

9:00 集合 → 聴聞室に案内され、待機。(9:20から開始すると言われるが、大抵遅れる。)

9:30 立会警察官から、制度、当日の進行等について説明。聴聞参加者の点呼が行われる。

9:50 聴聞官入室。一同起立。
   → 一人ずつ呼ばれて、聴聞官から質問を受ける(詳しくは質問事項の項参照)。
     公開の建前からか、聴聞手続参加者が傍聴する目の前で聴聞手続が実施される。
     (一般の人は入れないので、これが「公開」というのは流石に無理が。。。)

10:30 全員に対する聴聞手続終了
    → ここで一旦解散して外に出されます。
     11時50分に戻ってくるよう指示を受けます。
     しかしながら、周囲に役所しかない霞ヶ関で放たれて、1時間半後に戻ってこい
     と言われましても、という気分にさせられます。

11:50 再び集合

12:10頃 処分結果を各自に通知(書面交付)→解散

聴聞における主な質問事項

聴聞における質問事項は、極めて形式的で

・ 読み上げられた事実関係に誤りがあるかないか。

・ どうすれば事故が防げたと思うか。

・ どうして飲酒運転をしてしまったのか。

・ 今後車両の運転で気をつけたいことはあるか。

・ 被害者の方とは、現状どのような話となっているか。

・ 今後、自動車の運転について何か気をつけようと考えていることはあるか。

・ 最後に意見・弁明はあるか

という内容がほとんどです。

否認している場合には、多少突っ込んだ質問もありますが、いずれにしても極めて形式的な質問しかなされません。

聴聞の手続といいながら、事前に、事実関係を争う場ではない、と言われたり、
聞かれたこと以外は話さなくて良い旨を言われたりする点は、弁明の機会を形式的に与えるつもりしかないのだろうという意思をまざまざと感じます。

なお、事実関係について争っている当事者がいるにも関わらず、処分を全員が受けることを前提とした話をするなどする対応も、そのような意思の表れなのだろうと思います。
少なくとも、法律が求めているような、弁明の機会としての聴聞は、全く実現されていないと言わざるを得ないのが現実です。
(ですので、冒頭のような、弁護士の関与について消極的な記載をせざるを得ないわけです。)

最後に

弊所では、公安委員会の聴聞や、その後の審査請求等についてもご相談等取り扱いをしております(実際にどの程度お役に立てそうであるかは、事案によりますので、相談時に具体的なお話を伺ってからということになります。)
前述のとおり、聴聞手続自体は、極めて形式的かつ硬直的な運用がなされていますので、なかなか弁護士が関与したからといって話が大きく変わるわけではありませんが、一人での対応に不安を感じられる方や、主張を尽くしたいという方につきましては、まずご相談いただけますと幸いです。